マサンダザ訪問記

折角なので、2000 年初夏にマサンダザを訪れた時の日記を抜粋して掲載します。


6 月 23 日

リンメタン着。ここからマサンダザまでは徒歩だ。日が照っていないとはいえ暑い。周囲は木が鬱蒼と茂っていて、トウモロコシ畑が続き、様々な草々が生い茂っている。前回訪問時とはまったく様相を異にしている。やっとこの村に着いたと思うと足取りも軽い。


やっとのことで、前回もお世話になった村長宅に着き部屋に通される。もう汗だくだ。しばらく休んでいると、お茶や果物などをいろいろと出してくれた。この村はかなり裕福なのではないだろうか?果物も豊富だ。グアバ、プラム、パッションフルーツ、バナナなどが庭に植えられている。イネやトウモロコシも栽培されている。


一息ついてラカンに行く。自分の送ったお布施が形になっているのがうれしい。壁にはカギュ派の系譜と阿弥陀、グル・リンポチェなどが描かれている。まだ、ここには金が塗られておらず、黄色のままだ。仏像は中央にシャキャムニ、右にグル・リンポチェ、左にペマ・リンパの教義によるマハーカーリーが鎮座している。ここでしばらく村長と堂守と話をする。村人もやってきたが何故かみんな女性ばかりだ。アラをみんな持ってきていて、アラの攻勢がすごい。寺院裏手の 10 世紀の遺跡の話になる。出土品を 1 つ政府に持っていかれてしまったそうだ。現在トンプ時代の遺跡のものとしてパロの国立博物館に収められている。でも、他のものは新しく建てたチョルテンに収めてしまったとのことだ。幹線からの森林伐採用の道路がオーストリアデンマークの援助によって隣の尾根に建設されるらしい。 1 年後には完成しているかもしれない。


村長宅に戻る。みんな顔を覚えてくれていてうれしい。夕食前、暗くなるころ、外でボーっとしていると蛍が何匹かツーっと飛んできた。よくよく見ていると、そこらじゅうに飛んでいる。こんなにたくさんの蛍など人生で初めて見たかもしれない。非常に感激。夕食後、村人が集まってきて、話をする会が開かれる。みんなお布施に感謝している、モンガル・ゾンカクで一番の寺になっているかもしれないなどと言われる。一番かどうかはともかくとして、何気なくはじめた金泥のお布施を喜んでくれる人々がいるのがとてもうれしい。アラをどんどん進められて、もう泥酔状態。



6 月 24 日

7 時半起き、8 時朝食。モンガルで買ったパンは余分だったかも。最後にもう一度アラの攻勢。 8 時半出発。 300Nu 、村長の奥さんに渡す。サンゲイ氏は先に車に戻るという。ラカンへもう一度行ってみることにする。ここはトンプの遺跡があったところだという。様々な出土品が出ていることがそれを裏付けている。だいたい 10 世紀頃の話らしい。管理をする老人とその奥さんが来て、またアラを振舞ってくれた。アラ万歳。意を決して一気に飲み干す。ちょっと気分がよくなってきた。もうこの時点で外はかなりの暑さになっている。でも、出土品を見れないのなら朝もう一度ここに来る必要はなかったのに…。こういう時、言葉の壁を感じる。 9 時半もう一度村長宅に戻る。ションガル付近の民話について質問していると 1 時間近く経ってしまった。ここでもまたアラが振舞われる。10 時半、やっと重い腰をあげて出発。


付近は背丈もあろうかというトウモロコシ畑。その中を縫うようにして歩く。それにしても蝶がすごい。そして大嘴の鳥が悠々と空を舞って、近くの木にとまって一声啼いた。吉兆だという。トゥムシン・ラは無事に越えられそうな予感。 11 時リンメタン到着。暑くて暑くてとにかく何か飲みたい。商店でペプシ 15Nu 。こんな村でも冷えた(といっても心持だが)ペプシが飲めるなんて時代は変わっていくものだなあと実感。