ゾンDzongの歴史


ゾンは本来チベット起源とされますが、ブータンに顕著に見られる建造物です。英語では「城砦 fortress 」と訳される、行政と宗教の中心として交通の要衝に建設された建物です。


ゾンの起源は12世紀に遡るとされます。カギュ派ラ派のラマ、ゲルワ・ハナンパ Gyalwa Lhanangpa によって考案され、ブータンでは、1153年にパジョ・ドゥゴム・シクポがティンプーのデチェンポダンのある場所に、ドゴン・ゾン Do hon (Do ngon) Dzong (青い石のゾン)を建設したのが始まりです。当時のゾンは僧院としてのみ機能していました。


ゾンの役割が大きく変化したのは、17世紀のガワン・ナムゲル以降だといわれています。彼は、ゾンを防衛拠点、宗教の中心地、行政の中心地という三つの役割を担う重要な建造物として位置付けました。従い、これ以降のゾンは、交通の要衝に戦略的に建設され、当時の行政長であるペンロプやゾンポンがゾンに居住し、その権力を誇示するようになります。つまりゾンの奪取がそのまま戦争の勝利となったのです。1907年以降は行政機関と僧院の機能だけに限定され、地方行政単位であるゾンカクの中心として、ゾンダ・ティンポンの下で機能するようになりました。


宗教的役割の面から見ると、ゾンは僧侶の住居・修行の場所でもあることから、日没以降のゾンへの女性の立ち入りを厳しく制限しています。

ゾンはまた、国宝や史料を保管する施設としても機能していました。しかし、多くのゾンは自然災害や火災の被害を受け、幾度となく修築されてきました。また国内の重要な史料が逸失してしまいました。



主要ゾン建設略年表

1627年(1570) シムトカ・ゾン
1637年 プナカ・ゾン
1638年(1578) ワンデュ・ポダン・ゾン
1641年 タシチョ・ゾン
1646年 パロ・ゾン
1646年 ガサ・ゾン
1648年 トンサ・ゾン
1649年 ドゥゲ・ゾン
1651年 ダガ・ゾン
1659年 タシガン・ゾン
1676年 ジャカル・ゾン
1915年 ハ・ゾン
1930年 モンガル・ゾン