シムトカ・ゾン Semtokha Dzong
シムトカ・ゾンはティンプーから8km程南に下りた、パロ=タシガン、ティンプー=プンツォリンの幹線道路が交錯する交通の要衝に聳え、ティンプーに向かう谷の三方を監視する戦略的な位置を占めている。1627年にガワン・ナムゲルによって建設されたブータン最古のゾンの一つで(しかし、JCホワイトは1570年建設、1572年修築と報告している)、1Nu札にもその勇姿が描かれている。シムトカの語源は simmo(悪霊) do(石) khang(建物) といわれ、悪霊が吸い込まれた石を見張るためにこの場所が選ばれたという伝説がある。チベットのデシ・ツァンパ Desi Tsangpa はゾンの建設を妨害するために五人のラマを送ったが、ガワン・ナムゲルによってチベット軍は撃退された。1630-31年、チベットのデシは再度ブータンに攻撃を仕掛け、ゾンを占領することに成功したが、火災に遭いチベット軍は全滅した。その後、ゾンはガワン・ナムゲルによって再建された。
1629年には最初の外国人であるポルトガル人イエズス会教父がガワン・ナムゲルを訪問し、チベットとの交戦への援助を求めたが拒否された。現在は国内最大の僧侶学校でRIM(王立経営専門学校)やゾンカ教師養成学校などの機能を持っている。
ゾンの特徴はスレート板の四角い石板の列と聖人の壁画である。ニンマ派、カギュ派の歴代ラマの絵が本堂の外に連なっており、八人のインドの学匠 (6 ornaments and 2 excellences) や35仏陀(トンシャク Thongshag)が含まれている。
また、ゾンは三人の守護尊を持つゲン・カン Goenkhang という寺院を有している。中央にイェシン・ゴンポ Yeshing Gompo、右にゴンポ・ジャロ・ドンチェン Gompo Jharo Dongchen、左にパルデン・ラマ Palden Lama が安置されているが、ここは一般人や旅行者は訪問できない。本堂には中央に仏陀の像が安置され、その周囲には八菩薩が配されている。また16聖人 Neten Chudrugなどが描かれている。
ゾンの歴史
1627 ガワン・ナムゲルによって建設
1629 最初の外国人(ポルトガル人イエズス会教父)がガワン・ナムゲルを訪問
1630 チベットの攻撃
《参考》
八学匠
- Nag Arjuna ナーガールジュナ(龍樹)
- Arya Deva アールヤデーヴァ(提婆 だいば)
- Asanga アサンガ(阿僧伽 あそうが/無着 むちゃく)
- Vasu Bandhu ヴァス・バンドゥ(世親 せしん)
- Dig Naga ディグナーガ(陳那 じんな)
- Dharma Kirti ダルマ・キールティ(法称 ほっしょう)
- Akash Garva アーカーシュ・ガルヴァ(虚空蔵)
- Kshiti Garva クシティ・ガルヴァ(地蔵)
八菩薩
- Jampel Yang (Manjushri) 文殊菩薩
- Chana Dorji (Vajrapani) 金剛手菩薩
- Chen Rezi (Avalokiteshwara) 観自在菩薩
- Sai Hingpo (Kshtigarva) 地蔵菩薩
- Dripa Nampasel 除蓋障菩薩
- Namkhe Hingpo (Akashgarva) 虚空蔵菩薩
- Jhampa (Maitriya) 弥勒菩薩
- Kuntu Sangpo(Samantabhadra) 普賢菩薩