ブータンの人口は何故2種類あるのか


ブータンの人口を調べた人が、必ず目にする2つの数字。これを見た人は「は?」と思うことでしょう。例えば下の数字です。

2002年 2,094,176人       716,423人(政府発表)
2001年 2,140,000人(国連推計) 654,000人(政府発表)

 

資料によって人口統計に大きな差が出ていることにはこんな理由があると言われています。


1980年代末まで、ブータンの人口は約130万人(推定)とされていました。1971年の国連加盟申請の際に、人口データを提出する必要があり、それまで組織だった人口調査が行われた事がなかったブータンでは、対応を協議した結果、先代国王の顧問の「総人口が100万以下では加盟申請が考慮されない可能性もある」という発言により、取り敢えず人口を「100万人(推定)」として国連に提出することにしました。それ以降も本格的な人口調査が行われることはなく、一般的な人口増加率を当てはめ、バーチャルな統計を公表しつづけた結果、1989年には約130万人(推定)となってしまいました。


1989年頃から、南部においてネパール系住民の問題が深刻化したため、正確な人口調査の必要性が増し、1990年代に入って初の全国レベルの本格的な人口調査を行った結果、推定ながら把握した数字が約60万人でした(それ以前に人口調査が無かったわけではありません)。


ブータンの行政・税制単位は個人ではなく「グン」という戸・家単位なので、グンの数字は正確に把握できますが、各グンを構成する人数は伝統的に集計されていませんでした。出生届の制度は確立していますが、住民登録制度は十分機能していないので、人口が今に至っても正確に把握できないようです。


人口が約60万人だと判明したとはいえ、現在のところ「人口約180万人」という数字と、「約60万人」という数字は、各種統計に前者の数字が採用されていることもあり、錯綜しているのが現状です。それが意図的になされたものかどうかはわかりません。しかしながら、反政府組織の中には、それを「国連からの援助を割増させることが目的」としてブータン政府の詐欺行為だと主張する人々もいます。