ブータン人のチベット観

ここにはチベット人に対する不適切な表現が含まれていますが、ブータン人のチベット観を理解するために必要と判断致しましたので自主規制せずに掲載します。どうか御諒承頂きたく宜しくお願い致します。

2000年のブータン旅行で、何人かのブータン人に「チベット人をどう思うか」について聞いてみました。チベット人ブータン観は、「チベット文化圏の辺境」という見方が一般的なようで、直接的に口にこそしないものの、「所詮田舎者」と心のどこかでバカにしているところがうかがえます。ここではその逆についてブータン人に聞いてみたわけですが、総じて「ブータンブータン」という考え方が一般的なようです。


(1)チベット人観におけるブータン東西の温度差

ブータン人(主にツァンラ)は宗派(ニンマ派)の関係からチベット人に対して多少なりとも敬意を払っているようですが、西ブータン人、特に「ガロンこそが『ドゥクパ』だ」と思っているような人々は、チベット人を「乞食」だとか「狡猾」だとか言ってあからさまに蔑視している節が伺えます。まあ、それだけ「ドゥクパ」であることに誇りを持っているってことなのでしょうが。但し、東チベットのカムパについては親近感を持っているようで、彼らの勇敢さ、実直さを高く評価し、ブータン人と同一の気質だと認識しているようです。一方、チベットの支配者である中国に関しては全くと言っていいほど関心がありませんでした。


(2)ダライ・ラマ猊下他の高僧について

概ねブータンカギュ派チベットゲルク派という宗派の違いからか、チベットの高僧についての政治的要素には本当に無関心です。「ダライ・ラマパンチェン・ラマ?高僧(リンポチェ)としては尊敬してるけど、崇拝はしてないねえ…」という状態。但し、宗派の近いカルマパ14世に関しては、総本山のルムテク寺院(シッキム)にブータン僧が多いこともあって、関心は高いようです。チベットの現状に関しても、自分たちがインドから独立を守り切ったという自負がそうさせるのか、比較的冷淡で、無能な政府・役人だから独立が守れなかったのは当然の成り行きだとばっさり切り捨てる人もいました。


(3)ブータン国内のチベット人

国内のチベット人に対しても複雑な感情を抱えているようで、表面化する差別とまではいかないまでも、難民として流入してきたチベット人に手厚い保護(土地など)を与えたにもかかわらず、国民としての忠誠を誓うこともなく、ブータン政府の政策を無視したり、国家転覆を画策したり、国籍取得に消極的であったり、ブータン人よりも商売で成功して裕福になったりという背景から、快く思わない人も多いようです。但し、商売下手のブータン人。実際のところは単なる成功者への嫉妬、やっかみに過ぎないのではないかという気もしますが…。■